毎月給料から天引きされている健康保険料。
どのような計算で保険料が決められているかご存知でしょうか?
毎月払うものだからこそ、どのような仕組みになってるか理解しておきましょう!
健康保険料とは
被用者保険の加入者(会社員とその家族)が払う保険料です。
被用者保険には以下のものがあります。
全国健康保険協会管掌健康保険 (協会けんぽ):
中小企業の会社員とその家族が対象
組合管掌健康保険:
大企業等の会社員とその家族が対象
国家公務員共済組合:
国家公務員とその家族が対象
地方公務員共済組合:
地方公務員とその家族が対象
私学教職員共済組合:
私立学校の教職員とその家族が対象
船員保険:
船員とその家族が対象

保険料の計算式
被用者保険の保険料は、以下の計算式で算出されます。
月給にかかる保険料
=標準報酬月額×健康保険料率
賞与にかかる保険料
=標準賞与額×健康保険料率
ここで重要になってくるのが、標準報酬月額と標準賞与額。
どのような額なのか、詳しく見ていきましょう。
標準報酬月額、標準賞与額とは
標準報酬月額とは
被保険者が会社から受け取る月額報酬※(控除前の額面)を切りの良い幅で区分したときの額をいいます。
※報酬の範囲
基本給のほか役職手当、通勤手当、住宅手当、家族手当、残業手当など会社から現金または現物で支給されるもの(賞与に関して4回以上ある場合は含める)
標準賞与額とは
標準賞与額を決める場合にそのもととなる賞与は、被保険者が労働の対償として受けるもののうち年3回以下の支給のものをいいます。労働の対償とみなされない結婚祝金等は対象外です。
標準報酬月額の決め方
タイミングとしては、定時決定(現にお勤めの方)と資格取得時の決定(新卒、中途社員)の2つがあります。
①定時決定 (年に1回の見直し)
7月1日時点で在職中である場合、毎年4,5,6月に受けた報酬(支払基礎日数※17日以上)の平均額を標準報酬月額等級区分に当てはめて、その年9月から翌年の8月までの標準報酬月額を決定します。
※支払基礎日数とは
★月給制:各月の暦日数が支払基礎日数
欠勤日数分に応じ給与が差し引かれる場合…就業規則、給与規定等に基づき事業所が定めた日数から当該欠勤日数を控除した日数が支払基礎日数となる。(休日出勤の日数についても、支払基礎日数に含めることになります。)
★日給制:各月の出勤日数が支払基礎日数
《例》月給者で、20日締切25日支払の形態をとる事業所
固定給22万円の月給制で、給与規定等により、欠勤控除について欠勤1日つき、固定給の22分の1を控除するとの規定があり、6月25日支払いの給与決定するうえでの算定対象期間となる5月21日~6月20日までの間に、2日欠勤した場合。

「欠勤控除について欠勤1日つき、固定給の22分の1を控除する」の記載より、2日欠勤の場合、(固定給22万円÷22)×2日=2万円が固定給から差引かれます。また、6月の支払基礎日数は、欠勤控除に係る規定の日数22日から2日を引いた20日となります。
4,5,6月とも31日、30日、20日と支払基礎日数が17日を超えているので、(230,000円+230,000万円+209,000万円)÷3=223,000円が平均の報酬になります。この額から標準報酬月額表より標準報酬月額が決定します。
パートタイマーなど短時間労働者の場合
4〜6月の中で支払基礎日数が17日以上の月があればその平均を、15日以上17日未満の月しかなければその平均が基準となります。15日未満の月しかなければ、資格取得時決定などで決定された標準報酬月額が引き続き適用されます。
②資格取得時の決定
新規に被保険者の資格を取得した人の標準報酬月額は、次のa-dの方法によって決められます。
a. 月給・週給など一定の期間によって定められている報酬については、その報酬の額を月額に換算した額
b. 日給・時間給・出来高給・請負給などの報酬については、その事業所で前月に同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬の平均額
c. aまたはbの方法で計算することのできないときは、資格取得の月前1か月間に同じ地方で同じような業務に従事し、同じような報酬を受けた人の報酬の額
d. aまたはbまでの2つ以上に該当する報酬を受けている場合には、それぞれの方法により算定した額の合計額
(関係条文 健康保険法 第42条 )
標準報酬月額の変動により変更する方法としては、「随時改定」「産前産後・育児休業終了時」の2つがあります。
①随時改訂
次の3つが全て当てはまる場合に、固定的賃金(基本給・役職手当・通勤手当・在宅手当など稼働や能率の実績に関係ない額)の変動があった月から4ヶ月目に改定が行われます。
- 昇(降)給などで、固定的賃金に変動があったとき
- 固定的賃金の変動月以後継続した3ヶ月の間に支払われた報酬の平均月額を標準報酬月額等級区分にあてはめ、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき
- 3ヶ月とも報酬の支払基礎日数が17日以上あるとき
固定的賃金とは?
基本給・家族手当・役付手当・通勤手当・住宅手当など、稼働や能率の実績に関係なく、月単位などで一定額が継続して支給される報酬をいいます。
②産前産後・育児休業終了時
育児休業等を終了した(育児休業等終了日において3歳に満たない子を養育する場合に限ります。)後、育児等を理由に報酬が低下した場合、随時改定の事由に該当しないときは、次の定時決定が行われるまでの間変動後の報酬に対応した標準報酬月額に改定することができます。
【改定になる場合】
被保険者が改定対象者に該当する場合であって、事業主を経由して保険者に申出をしたとき
【改定となる対象者】
・1歳に満たない子または1歳から1歳6ヶ月に達するまでの子を養育するための育児休業を終了した被保険者
・1歳から3歳に達するまでの子を養育するための育児休業制度に準ずる措置による休業を終了した被保険者
【改定の基準】
育児休業等終了月(ただし、終了した日が月末である場合は、その翌月)以後3ヶ月間に受けた報酬の平均月額を標準報酬月額等級区分にあてはめ、現在の標準報酬月額と1等級でも差が生じた場合には、改定します。
【改定開始月】
育児休業等終了日の翌日から起算して2月を経過する月の翌月から、標準報酬月額が改定されます。なお、改定された標準報酬月額は、次の定時決定までの標準報酬月額となります。
(関係条文 健康保険法第43条の2、厚生年金保険法第23条の2)
標準賞与額の決め方
被保険者期間中において、税引前の賞与総額から千円未満を切り捨てた額が標準賞与額となり、賞与が支給される月毎に決定されます。
標準賞与額の上限は、健康保険は年間累計額573万円(毎年4月1日から翌年3月31日までの累計額)となり、厚生年金保険については1ヶ月あたり150万円が上限となります。
また、育児休業等により保険料免除期間に支払われた賞与についても標準賞与額として決定し、年間累計額に含まれます。
なお、年度途中で被保険者資格の取得・喪失があった場合の標準賞与額の累計については、保険者単位とすることとされています。したがって、同一の年度内で複数の被保険者期間がある場合については、同一の保険者である期間に支払われた標準賞与額は累計することとなります。標準賞与額の累計が年度内に既に573万円に達した後においても、賞与が支払われた場合については、それ以降、標準賞与額は0円として保険者が決定することとなります。
実際に計算してみよう
東京都内の中小企業の会社員Aさん、介護保険未加入
4月~6月の報酬(支払基礎日数はそれぞれの月で17日を超えているものとする)
・4月:26万円
・5月:25万円
・6月:27万円
賞与(年2回)、1回の総支給額が50万1950円
まず、4~6月の報酬額を足して3で割ります。これが報酬月額になります。
(26万円+25万円+27万円)÷3=26万円
次に、各被用者保険のサイトにある保険料額表を参照して、保険料を確認します。
★協会けんぽの場合
都道府県毎の保険料額表のページから該当の年度、都道府県を選びます。
都道府県の選び方
基本的に会社の所在地になります。従業員の住所では無いのでご注意ください。Aさんの場合は東京都に会社があるため、東京都の保険料額表を参照することになります。本社と事業所が別の都道府県にある場合は、会社が申請している場所になります。健康保険証の保険者名称や所在地からも確認もできます。
下の保険料額表より、Aさんの等級は20で、9月以降支払う健康保険料は月12,974円であることがわかりました。
賞与の1回の総支給額が50万1950円より、千円未満を切り捨てて標準賞与額は50万1,000円になります。
令和6年の東京都での保険料率は9.98%だったので、標準賞与額と健康保険料を掛け合わせることで賞与にかかる保険料がわかります。
50万1,000円×0.0998=4909円
4,5,6月に残業するなと言われるのは何故か
残業代は、もちろん労働の対価ですので標準報酬月額に入ってきます。
先程お伝えした通り、継続で勤務されている方は毎年4,5,6月(支払基礎日数※17日以上)での手取り平均額が標準報酬月額に関わってきます。
標準報酬月額に保険料率をかけて保険料が決まるので、4、5、6月の残業代が増えれば増えるほど標準報酬月額も大きくなり、保険料も高くなります。
また、「当月払い」と「翌月払い」でも異なってきます。
定時決定で使用される「4,5,6月に支給された給与額」は、実際に支払われた金額です。
当月払いでは、その月の残業代が同じ月に支払われます。
4月分の勤務→4月に支払われる給与
5月分の勤務→5月に支払われる給与
6月分の勤務→6月に支払われる給与
そのため、定時決定の対象になる標準報酬月額に対応する勤務は4,5,6月分になります。
翌月払いでは、その月の残業代が翌月に支払われます。
3月分の勤務→4月に支払われる給与
4月分の勤務→5月に支払われる給与
5月分の勤務→6月に支払われる給与
そのため、定時決定の対象になる標準報酬月額に対応する勤務は3,4,5月分になります。



手取りが少なくなってしまい悲しいですが、実はメリットもあります。
それは、標準報酬月額をもとに決まる保険給付と厚生年金の額です。
・傷病手当金が増える
・出産手当金が増える
・厚生年金が増える
まとめ
毎月の保険料は4,5,6月の報酬によって、賞与の保険料は賞与額をもとに計算されていることがわかりました。
保険料のメリットデメリットを知ったうえで賢く生活していきたいですね。
コメント