解熱鎮痛剤として有名なカロナールとロキソニン。
市販薬の種類も豊富な、馴染みのある薬です。
効果が似ている両者ですが、実は違うところもあります。
今回は気になる違いについて解説します!
熱や痛みが出る仕組み
そもそも、熱や痛みはどうやって起こっているのでしょうか?
ヒトは感染やアレルギー、外傷等により組織が障害を受けた時に、防御反応(炎症)が起きます。
組織障害を受けると、肥満細胞(マスト細胞)やマクロファージが炎症を引き起こす物質をそれぞれ放出します。これによって、血管反応(血管拡張による血流量増加や血管透過性亢進)や免疫細胞の活発化が起こり、組織の修復がおこなわれます。
その過程で生じる特徴に、発赤・熱感・腫脹・疼痛があります。
発赤
炎症部位の血流量が増えることにより、皮膚や粘膜が充血して赤くなります。
組織の修復に必要な酸素や栄養は血流にのって運ばれているので、組織の回復に役立ちます。
熱感
炎症部位の血管量増加で、その部位の温度が高くなります。
また、マクロファージ等が放出した炎症物質が視床下部にある体温を調節する部位に作用して体温が上昇します。体温が高くなると免疫細胞の活発化に繋がります。
腫脹
炎症部位の血管の壁が通り抜けやすくなり(血管透過性亢進)、水分が漏れ出して腫れます。
栄養分も移動しやすくなるので、組織の回復に役立ちます。
疼痛
炎症部位の血管透過性亢進により移動したマクロファージ等が発痛物質(ブラジキニン)を放出し、神経を伝って脳に届き、痛みとして感知されます。
熱や痛みが出るのは、身体を守るための大事な防御反応の一部だったんですね。
しかし、熱や痛みが出続けるのは肉体的にも精神的にも大きな負荷がかかるので、炎症に伴う症状を緩和するため解熱鎮痛剤等が用いられています。
次からは実際にカロナールとロキソニンの違いをみていきましょう。
①効き方の違い
同じ効果がありますが、薬が作用している場所は異なります。
カロナール
・解熱作用
視床下部の体温調節中枢に作用して血管を拡張させ、熱が放散されます。
・鎮痛作用
視床と大脳の痛覚閾値を上げ、痛みに対する感度を下げることで痛みを感じにくくなります。
ロキソニン
シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害することで以下の反応が起こります。
・解熱作用
視床下部の体温調節中枢付近のプロスタグランジンE2(PGE2)生合成が阻害され、体温調中枢を抑制し、体温が下がります。
・鎮痛作用、抗炎症作用
炎症部位でのPGE2生合成が阻害され、発痛物質(ブラジキニン)の感度が低下し、痛みを感じにくくなります。
また、PGの多くが炎症反応に関与しているため、PG生合成を阻害することで炎症を抑えることができます。

カロナールは解熱作用と鎮痛作用のみですが、ロキソニンは抗炎症作用もプラスでもっています。
②効きの強さ
解熱鎮痛の効果は、一般的にロキソニンの方が強いとされています。
カロナールは穏やかに効くイメージ、ロキソニンはシャープに効くイメージです。
③こども、妊婦の服用
カロナール
小児への投与
“低出生体重児,新生児及び3ヵ月未満の乳児に対する使用経験が少なく,安全性は確立していない。”
出典:カロナール錠500mg 添付文書より
妊婦又は妊娠している可能性のある女性: 治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
授乳婦: 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
出典:カロナール錠500mg 添付文書より
カロナールは幼児にも使うことができます。体重当たりの量が決められていますので、医師の指示どおりに服用しましょう。
妊婦や授乳婦の方でも処方される場合があります。
ロキソニン
小児等への投与
“低出生体重児、新生児、乳児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない。”
出典:ロキソニン錠60mg 添付文書より
妊娠後期の女性:投与しないこと
妊婦(妊娠後期を除く)又は妊娠している可能性のある女性:治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
授乳婦: 治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。
出典:ロキソニン錠60mg 添付文書より
小児(15歳未満)の服用は認められていません。
妊娠後期の方は服用できなく、妊娠後期以外の妊婦や授乳婦の方は、医師の指示のもと服用するようにしましょう。
④副作用
代表的な副作用は以下になります。
カロナール
肝障害
過量投与で肝臓に負担をかけることがあります。また、アルコール摂取でそのリスクが上がるので注意です。
ロキソニン
胃腸障害
COX-1を阻害することで、胃酸分泌抑制・胃粘膜分泌促進作用があるPGE2、PGI2の量が減り、胃酸の分泌が増えたり胃粘液が減ることで胃の内部に深い傷ができてしまいます。


腎障害
腎臓の血流量を増加させる作用があるPGE2、PGI2の量が減ることにより、腎臓の血流量が減って尿量が少なくなったり浮腫みやすくなったりします。
アスピリン喘息
代償作用により気管支収縮作用があるロイコトリエンの量が増え、気道が過敏になりやすくなります。



ロキソニンなどの非ステロイド性抗炎症薬は、インフルエンザ患者が使用すると「インフルエンザ脳症」を起こす恐れがあります。ほとんどは乳幼児でおこりますが、大人でも可能性はあるため、インフルエンザの疑いがある場合はカロナールを選ぶことが多いです。
まとめ
カロナール
・穏やかに効く
・こどもや妊婦に使いやすい
・飲酒は注意
ロキソニン
・早く効く
・こどもや妊婦に使いにくい
・胃腸障害など副作用が多い
効果は同じなカロナールとロキソニンですが、異なる点もしばしばあります。
服用する際には、医者や薬剤師、市販薬では説明文の指示に従うようにしましょう(*^^*)
コメント